花粉症

■花粉症は、なぜ起こる?

●花粉が体内に入ると体が過剰反応し、「くしゃみ、鼻水」などの症状が起こる

植物の花粉によって起こる「花粉症」。花粉症は、アレルギー性の病気で、正式には「季節性アレルギー性鼻炎」といいます。

 花粉症を引き起こす原因となる樹木、草木はたくさんあります。代表的なものを紹介しましょう。

▲スギ花粉・・・・・2〜4月ごろにかけて盛んに飛散します。

ヒノキ花粉・・・・・3月末ごろ〜5月ごろにかけて盛んに飛散します。

▲イネ科の植物・・・・・「ハルガヤ」「カモガヤ」などの花粉が5〜8月ごろまで飛散します。

▲キク科の植物・・・・・主に「ブタクサ」「ヨモギ」などの花粉が8〜10月ごろ多くなります。

これらのなかで、特に日本で多いのは、「スギ花粉症」です。現在、日本人全体の約15%の人がスギ花粉症に悩まされているといわれています。

●花粉の量は夏に決まる
 花粉の飛散量は、スギの木が花芽をどのくらいつけるかで決まります。スギの場合、花芽は夏につくられるため、夏の気候によって、翌年の花粉の量が決まります。「暑くて、日射量が多く、雨が少ない」夏の翌年の春は、たくさんのスギ花粉が飛ぶといわれています。

●花粉症の症状
 花粉症の症状は、主に鼻と目に現れます。

▲鼻・・・・・くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど。

▲目・・・・・かゆみ、涙目など。

▲そのほかの症状・・・・・のどのイガイガ感、せきなど。なかには下痢を起こす人もいます。

■花粉症の起こる仕組み

では、一体なぜこれらの症状が起こるのでしょうか。
私たちの体では、異物(抗原)が侵入してくると、それを排除しようとする「免疫」の働きにより、「抗体」という物質をつくります。花粉が体内に侵入すると、アレルギー体質の人では、体内で「IgE抗体」がつくられます。
 しかし、IgE抗体がつくられたからといって、すぐに花粉症になるわけではありません。IgE抗体は、鼻などの粘膜にある「肥満細胞」の表面に付着します。この状態を、「感作が成立する」といいます。スギ花粉症の場合、感作が成立するまでには、約5年かかるといわれています。
 感作が成立したところに、再び花粉が侵入すると、IgE抗体は花粉と結合し、その刺激で肥満細胞から「ヒスタミン」「ロイコトリエン」などの化学伝達物質が放出されます。
 ヒスタミンは、くしゃみ、鼻水などの症状を引き起こし、ロイコトリエンは、鼻づまりを引き起こします。
 ヒスタミンとロイコトリエンのどちらが多く放出されるかには、個人差があるため、鼻づまりがひどい人、くしゃみがよく出る人など、症状の現れ方も異なります。
 なお、IgE抗体をもっている人すべてが花粉症になるわけではありません。実は、IgE抗体をもっている人のうち、約半分の人には、感作が成立していても症状が起こりません。なぜ症状が起こらないのか、詳しい仕組みについてはよくわかっていませんが、これらの人もいつか症状を起こす可能性はあります。

■アレルギー治療

薬で症状を抑える。早めに始めるのが効果的

●治療開始の時期によって薬が異なる
 花粉症の薬物療法は、患者さんがいつ治療を受け始めるかによって、治療法が異なります。具体的には、「初期療法」「導入療法」があり、それぞれ次のような内容になっています。そして、これらの治療で症状が安定したら、「維持療法」が行われます。

▲初期療法・・・・・症状が出る前、あるいはごく軽いうちに「抗アレルギー薬」の服用を始める治療法です。なお、この「抗アレルギー薬」は、毎日服用する必要があります。

▲導入療法・・・・・初期療法を受けずに、症状がひどくなってしまった場合、すぐに症状を和らげるために、ヒスタミンの働きを抑える「抗ヒスタミン薬」や、炎症を抑える作用のある「経口ステロイド薬」を服用します。また、点鼻薬の「局所ステロイド薬」も使用します。
 なお、ステロイド薬には、「顔が丸くなる、にきびが出る」などの副作用があるため、長期間の服用はできません。そのため、これらの薬によって、症状が安定したら、次の維持療法に移行します。

▲維持療法・・・・・初期療法や、導入療法によって症状が抑えられた状態を保つために、毎日「抗アレルギー薬」の服用を続けながら、症状に応じて、抗ヒスタミン薬、局所ステロイド薬を用います。
 花粉の飛散期間中は、この維持療法をずっと続けます。

●治療の開始時期には個人差がある
 花粉の「飛散開始日」という言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。この飛散開始日とは、「1cu当たりに1個以上の花粉が2日続けて飛んだ日」を指します。つまり、飛散開始日以前でも、ごく微量ながら花粉は飛んでいるのです。
 そのため、飛散開始日より前に、花粉症の症状が現れる人もいます。そのような人は、例えば、スギ花粉症の人なら、飛散開始日より前の、1月の半ばごろから初期療法を開始する必要があります。また、逆に、花粉の飛散量が多くなってからでないと、症状が現れない人は、飛散開始日から初期療法を開始してもよいでしょう。
 このように、治療の開始時期も、患者さんによって異なります。「自分は、いつごろ花粉症の症状が出てくるか」をきちんと覚えておいて、症状が出る前に治療を開始することが大切です。

■アレルギー日常生活の注意

●花粉と接触しないための工夫をする
 花粉の飛散量は、その日の天候でだいたい決まります。雨の日には、花粉は飛びません。逆に、晴れた暖かい日には、花粉が飛びやすくなります。特に、雨の降った翌日は、花粉の飛散量が多くなります。
 そのため、花粉情報や天気予報に注意して、花粉の飛散量の多い日は、なるべく外出を避けることが大切です。
 やむをえず外出するときには、マスクをつけたり、眼鏡をかけたりして花粉が体内に入るのを防ぐようにしましょう。
 また、セーターや毛織物地などのけばだった素材の服には、花粉がつきやすく、手で払ってもなかなか落ちません。出かけるときは、木綿の服や、化繊のつるつるした素材の服を羽織るようにします。
 そして、家に入る前に必ず服についた花粉を手で払うようにしましょう。また、花粉の飛散量の多い期間は、洗濯物や布団を外に干さないことも大切です。このような工夫で、家の中に花粉を持ち込まないようにします。

●無理をしない
 体の調子が悪いときは、花粉症の症状もひどくなります。そのため、規則正しい生活を心がけて、ふだんから体調を整えておくことが大切です。
 花粉症の治療は、患者さん自身の意思で始めるものです。
 できるだけ症状の軽いうちに医療機関を受診して、また、日常生活にも注意して、花粉症の期間をつらい思いをせずに過ごせるようにしましょう。